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J1第16節(9月13日)、ホームで浦和に3−4の劇的敗戦

20・09・15
 上写真/前半13分、浦和FW武藤がチャナティップに倒されて得たPKをFW杉本(左端)がキッチリと決めて先制する。札幌GK菅野、札幌ゴール裏サポーターからタメ息が聞こえてきそうだ

     (写真はいずれも9月13日、札幌ドーム、撮影・石井一弘)
 
 勝敗は「ジェイと共に去りぬ」

   コンサドーレの得点力は未知の世界か

 高校時代「風と共に去りぬ」と言う映画を見た。1939年に公開されたアメリカの南北戦争の白黒の映画から、テクニカラー、天然色になっていた。

 北海道コンサドーレ札幌は9月13日、2020年明治安田生命J1リーグ第16節を宿敵、浦和レッズと戦い3−4の今季2番目の得点合戦の末、敗れ去った。

 憤懣(ふんまん)やる方ないのは、3−3の同点ののちFWジェイを交代したこと。ジェイと対峙してきた浦和DF槙野智章にFKの流れから札幌ゴール前でGK菅野のこぼした球を決められた。映画では「さわやかな」別れだったようだが、この後80分(後半35分)ジェイが交代でピッチから消えた。槙野が浦和の終焉を作ったように、アディショナルタイムの48分浦和に4点目が入り、ピッチに残骸が広がった。4千449人のサポーターの物言わぬ「拍手」を、いつまでも、いつまでも。札幌ドームの外まで、早秋の時雨に包まれていた。

 試合の方は屋内気温23.6度、湿度56%。ドームでは最良のコンディション。荒木友輔主審(34=東京都出身)。国際審判で、昨年のルヴァンカップ決勝を吹いた、札幌には因縁の主審。浦和のキックオフで午後1時8分開始した。

 札幌は8試合勝ち星がなく、FWジェイをトップに、体調不良から立ち直ったチャナティップと浦和OBの駒井善成が「先鋒」を組んだ。3−4−3の基本のシステムに戻しGK菅野孝憲、3バックは進藤亮佑・宮澤裕樹・福森晃斗で基本形。ボランチは荒野拓馬と田中駿汰。WDFはルーカス・フェルナンデスと菅大輝。田中のボランチでノンストップのパス、キープからの展開が未知数だったがまずまずの立ち上がりだった。

 浦和はGK西川周作のベテラン。3バックは槙野智章を中心にトーマス・デンと岩波拓也。MFはエヴェルトン・青木拓矢にワイドに岩武克弥と関根貴大。FWは武藤雄樹・杉本健勇・興梠慎三。これまでの両者の対戦成績は、J2も含めると札幌の7勝4分け9敗で昨季は札幌が1勝1分け。浦和・大槻毅監督は2年目で、昨年14位に低迷、「今年はACL出場権獲得が目標」としている。

 札幌はこの日勝てば、J1ホーム50勝がかかっている。開始から、右のルーカス、左の福森からトップのジェイを狙ったロング・フィードが冴える。前半9分右CKを得て福森が中央に蹴り込む。一度DFにはじき出されたボールを札幌MF菅がロングシュートを放つもゴール枠外。浦和は興梠にスルーパスを集めるがGK菅野に阻まれる。やや浦和の攻めが早い。

 11分に浦和MF関根が、札幌ペナルティーエリアでチャナティップに倒されPK判定。キッカーは杉本。ゴール右へ蹴り込み先制点。さらに20分、DF右の青木がロングボールを札幌守備陣の裏に蹴り込み、杉本が走り込んでDF進藤と競り合いながら2点目をゲット。0−2と浦和リード。(23分飲水タイム)。

 札幌は福森、駒井がターゲットのFWジェイにはボールを送るがものにならない。今度は右のルーカスが持ち上がりセンタリング。浦和ゴール前へ上がったボールをジェイが頭上の高くからヘディングしGK西川が飛び上がっても届かないゴール右隅に入り待望の1点。これでJ1ホーム通算200点目を達成する。(2020年9月13日前半31分)。

 1点差に詰め寄った札幌は36分、右CKの流れからチャナティップから福森にボールが渡り、絶妙の左足クロスがゴール正面に。相手DFの上から飛び込んだジェイが2点目のヘディングシュートを決めた。2−2の同点で前半終了。


【監督のハーフタイムコメント】
■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「立ち上がりの失点は、もったいなかった」、「もっとボールを動かしていこう」、「続けて点をとっていこう」

■浦和レッズの大槻剛監督のコメント
 「0−0だ、後半もう一回やろう」、「相手の狙いはワイド、慌てずに対応しよう」、「トップの選手は、チャンスをしっかりものにしよう」


 後半は、荒野がキムミンテに代わり出場。DFのセンターに。宮澤がボランチに上がる。札幌のキックオフ。勢いのある札幌の攻撃が続き、浦和は選手交代時を検討。互いに攻防を繰り返す。浦和ベンチが動いたのは後半10分。浦和の興梠がFWレオナルドに、武藤がMFマルティノスへ。さらに16分エヴェルトンが柴戸海。札幌も19分駒井がアンデルソン・ロペス。チャナティップがドゥグラス・オリベイラに。第2次選手交代を果たす。これで前線にジェイ、Aロペス、Dオリベイラの札幌山脈がそろい踏み。190、185、188の長身が浦和を圧倒する。

 22分札幌にチャンスが。右CKを得る。キッカーは福森。左足でインサイドに曲がる変化球。ゴール正面に曲がったボールはそのままゴールイン。やや協議の末「オウンゴール」。札幌が逆転の3−2(27分飲水タイム)。

 浦和が選手交代で活性化を図る。関根が汰木康也、岩武が山中亮輔へそれぞれ交代。時を刻んで30分。浦和がセットプレーからの展開。汰木のクロスボールにGK菅野が飛び出してパンチング、こぼれた球を押せ押せムードで上がっていたDF槙野が押し込んで3−3の同点。

 札幌は35分にジェイがOUT、高嶺朋樹がIN。さらに42分菅に代えて白井康介が入った。福森―白井が前後で好機を狙うが「モノにならず」。アディショナルタイムは5分。

 事件は49分、札幌の左サイドが、がら空き。浦和・マルティノスが右から入り札幌のエンドラインいっぱいにドリブルで持ち込む。リターンはペナルティーマークの上あたりか。走り込んだ柴戸が右足で合わせると、札幌GK菅野の脇腹の下を抜けて決勝点。2得点と気を吐いたジェイの交代から10数分、「ジェイの腕章を巻いた姿」を見ているだけに、首脳陣の「ミスジャッジ」が、今後続かなければよいが―。

 新型コロナウイルス関連の試合延期の2020年明治安田生命Jリーグ第12節は9月16日午後7時30分から鳥栖市の駅前不動産スタジアムで、北海道コンサドーレ札幌―サガン鳥栖の間で行われる。


 上写真/前半20分、浦和FW杉本(14番)がカウンターからの長いドリブルで札幌DF進藤(右)を振り切りゴールを決め、2点目をあげる。札幌GK菅野、左はMF宮澤(10番)


 上写真/前半32分、札幌MFチャナティップは3試合ぶりに先発、ドリブルでかきまわす


 上写真/前半37分、札幌MF駒井(右)がDF福森の左からのクロスに、元同僚の浦和DF槙野(5番)と競り合いながらヘッドで合わせるが、GKにキャッチされる。DF進藤も岩武と競りながら飛び込む。駒井は浦和から移籍して3年目だが、初めて古巣との対戦となった


 上:上段写真/後半22分、札幌右CKをDF福森が左足で蹴り込んだボールは競り合いからゴールネットを揺らし逆転する。札幌MF宮澤と浦和FW杉本が競っていたが、結局はオウンゴールの判定となった。ガッツポーズの札幌の選手は、左からMFルーカス・フェルナンデス(7番)、DF進藤、FWアンデルソン・ロペス、倒れているのは浦和GK西川

上:下段写真/同じく後半22分、札幌右CKからの攻撃はオウンゴールながら逆転ゴールとなり、喜ぶ札幌の選手たち、左からFWドゥグラス・オリベイラ(33番)、MF宮澤(10番)、FWジェイ、MFルーカス・フェルナンデス(7番)、FWアンデルソン・ロペス(11番)、DF進藤(3番)


 上写真/後半30分、左サイドから浦和MF汰木の上げたクロスに、FWマルティノス(11番)と札幌GK菅野(右奥)が競り合い、こぼれたボールを後ろのDF槙野(5番)が押し込んで同点とする。右手前札幌DF福森、槙野の後方MF菅


 上写真/後半45分、札幌の大卒ルーキーDF田中(32番)が浦和ゴール前に迫りヘディングシュートするが、わずかにゴールポストの上に外し、絶好の勝ち越し機を逃す。33番がFWドゥグラス・オリベイラ、浦和GK西川(1番)、中央奥DF槙野


上:上段写真/後半追加タイム4分、浦和FWマルティノスのゴールラインぎりぎりからの折り返しを、途中出場したMF柴戸が押し込んでゴールを決める、これが決勝点となった。倒れている札幌DF進藤(右)は「やられた!」という表情、中央後方田中

 上:下段写真/後半追加タイム4分、浦和MF柴戸に決勝点となるゴールを決められガックリと腹ばいの札幌GK菅野、仰向けに伸びたままのDF進藤(右手前)、左端MFルーカス・フェルナンデス(7番)、中央DFキム・ミンテ(20番)、右奥ひざに手をやる田中


 上写真/スリリングな展開の末、3−4と敗れあいさつする札幌の選手たちと、温かい拍手の声援を送るゴール裏のサポーターたち


 上写真/激戦を終え古巣の浦和MF関根(41番)らを称える札幌のペトロビッチ監督(左)と、四方田ヘッドコーチとあいさつを交わす浦和の大槻毅監督(右端)


■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「今日のゲームは立ち上がりの20分までは相手をリスペクトし過ぎ、消極的だった。だが、そこから自分たちのプレーをする中で逆転ができた。最終的に敗れたが、主導権は握れていた。シュート25本(公式記録は23本)。CKの数でも上回った。試合を支配したことが分かると思う。最後まで選手はよく走ってくれて、良いゲームをしても結果が出ない、ここ最近の流れであると思います。結果に関しては監督である私が責任を持たなければいけない。ただし、私は与えられた仕事をまっとうしていきます。選手はよく戦ってくれているので心苦しい」


■浦和レッズの大槻剛監督のコメント
 「2点先に取れたところは準備段階からやってきたのですごく良かった。しかし、そこから失点をしてしまった。夏場を経て、コンディションのところは難しくなってきましたが、途中出場の選手が試合を動かしてくれて良かったと思っています」

池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影