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J1第1節(2月22日)、今季J1昇格の柏相手に開幕戦勝利を飾れず

20・02・25
前半の向かい風で2失点

J初戦は「研究不足を露呈」

 3年目のミハイロ・ペトロビッチ監督の顔がちょっぴり寂しい。北海道コンサドーレ札幌は2月22日、明治安田生命J1第1節を柏レイソルとアウエーの千葉県柏市の三協フロンテア柏スタジアムで対戦。前半風下の悪条件を乗り切れず2失点した札幌は、後半も連続2失点し一時4点差。それでも荒野拓馬と鈴木武蔵の得点で2−4としたが、守備陣の「だらしなさ」を披露してしまった。

 23日には2019年、Jリーグ最多得点(68)で優勝した横浜F・マリノスがガンバ大阪に1−2で敗れ去った。混沌とした第1節を感じた。コンサドーレもJ1開幕戦は予想に反したスタートだったようだ。指揮官をはじめスタッフの「ハイプレス」の盲点「守備の構築」を願ってやまない。

 試合の方は、午後3時3分トスで負けた札幌のキックオフで始まった。ホーム柏が風上を選んだからだ。バックスタンドの旗が勢いよく揺れ、天候は曇り、気温16.8度、湿度48パーセント。審判は家本政明主審(36=広島県出身、VAR資格も保持)。観衆は1万2千468人で札幌の応援席は2千500人程度。赤黒のサポーターが気炎を上げていた。

 2年振りにJ1の舞台に帰ってきた柏は、チケットが完売だったという。札幌のスタメンはGKク・ソンユン、3バックは進藤亮佑、キム・ミンテ、福森晃斗。ボランチに宮澤裕樹と荒野拓馬。右WB白井康介、左は菅大輝。トップにジェイ、右シャドーが鈴木武蔵、左がチャナティップ。センターバックのキム・ミンテが注目された。控えにはGK菅野孝憲、DF田中駿汰、MF駒井善成、金子拓郎、高嶺朋樹、ルーカス・フェルナンデス、FWアンデルソン・ロペス。

 柏はGKキム・スンギュが新加入の他は、4バックの高橋峻希・鎌田次郎・染谷悠太・古賀太陽。6年目のFWクリスティアーノ。ケニアからの3年目FWオルンガ。背番号10のFW江坂任らが目に付いた。

 両チームとも立ち上がりから、凡プレーが続き、札幌がまず右の白井が持ち込みシュート。さらに前半3分にもチャンスをつかんだが点を取れない。今度は柏が5分に、キム・ミンテの短いバックパスをFWオルンガに狙われ、GKクの手前まで寄せられたが、事なきを得た。

 互いに硬さが見えていたが、前半13分、前がかりな札幌の裏をオルンガが脅かす。トップに躍り出た江坂が持ち込み、シュートが決まり先制した。札幌の守備陣は気が抜けたようにバラバラ。札幌の凡ミスが続く。さらに20分、GKクが中途半端な飛び出しで、ゴールは無人に。FWオルンガにフリーで持ち込まれ、クが慌てて戻ったがゴールを割られた。

 札幌は左サイドのチャナティップ、菅らが相手ゴール前にチャンスボールを上げるが、ジェイへのマークが固く、得点できないまま0−2で前半を終わった。

 後半も札幌の攻守のバランスが取れない。札幌は後半12分に白井とフェルナンデスを交代。直後の13分、クリスティアーノからのパスを江坂が決めて3点目。さらに同20分にもGKクの飛び出しを軽くかわしたオルンガが無人のゴールにシュート。0−4の苦境に追い込まれた。

 ここから札幌の反撃が始まった。最初に反応したのが荒野で、後半23分、ロペスから上がったクロスはジェイに合わず。流れたボールはチャナティップが拾い、鈴木へ渡したが柏DFにつぶされ、こぼれたボールを中央から荒野が決めた。

 後半27分にはジェイとA・ロペスを代えて得点を狙う。まだ試合終了まで20分以上ある。札幌ベンチが押せ押せムード。さらに同31分、チャナティップがセンターライン付近で受けたボールを得意の反転で柏DFをかわし、鈴木にパス。抜け出した鈴木はGKと1対1になりながらも丁寧にゲットした。

 あと終了までは15分以上あった。後半34分ミンテを駒井に代えて「もう1点」。右のトップ下あたりに詰め寄った荒野に何度かチャンスはあったが、スコア2−4で試合終了。

 前半の2得点は、相手優位の「追い風」で、しょうがないとしても、柏の弱味をもっと研究すべきだった。ルヴァンカップのガンバ大阪戦を見ても、1得点してから柏は「しまりがない。疲労が見えた」。札幌も今回の対戦で「後半に弱い柏」を見ただろう。「ふっと選手が安心する」と言う「瞑想を」彼らに見たような気がする。

 札幌の次戦は2月26日に、YBCルヴァンカップグループステージ第2節サンフレッチェ広島戦が行われる予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を懸念したJリーグが試合開催延期を決めた。代替日は現時点で未定。

(写真はいずれも2月22日、三協フロンテア柏スタジアム、撮影・石井一弘)


 上写真/前半34分、札幌MFチャナティップ(18番)が柏MFヒシャルジソン(8番)に倒されFKを得る


 上:上段写真/今年も札幌のキャプテンを務めるMF宮澤(10番)が前半44分、柏MFヒシャルジソン(8番)、DF高橋峻(6番)をかわしてドリブルで突進する

 上:下段写真/後半33分、柏ゴール前の混戦から札幌MF宮澤(10番)が柏DF高橋祐(3番)、古賀をかわしながらシュートするが、GKキム・スンギュ(17番)に阻まれる

■北海道コンサドーレ札幌の宮澤裕樹選手のコメント
 「リーグ戦に向けて準備をしてきたつもりだけど、こういう結果になってしまって本当に悔しい。これだけたくさんのサポーターが開幕を楽しみにして駆けつけてくれた中での結果ということで、不出来だったことは間違いないと思います。

  自分たちもたくさんチャンスは作りましたけど、決め切ることができなかった。失点は簡単に失点してしまう場面が多かったので、そこをしっかり修正していかないと、どれだけ攻撃力があっても勝ちにつなげることはできないと思います」


 上写真/前半追加タイム4分、札幌左CKからFWジェイ(中央左)、MF鈴木(9番)らがゴール前に迫るも、柏DF鎌田(2番)や足を伸ばしたMF三原(27番)にクリアされる

 上:上段写真/後半13分、柏FW江坂(10番)に追加点を入れられ、札幌のゴール裏サポーターから悲鳴が聞こえてくるようだ。0−2で後半に入り、次の得点をどちらが取るかが、この試合を決めるという展開で、柏に3点目を入れられ窮地に陥った。左20番がDFキム・ミンテ、27番がMF荒野、GKク・ソンユン
 上:下段写真/後半13分、柏FW江坂(中央の10番)が追加点を決めチームメイトに祝福され笑顔を見せる。札幌の選手はMFチャナティップ(左端)、荒野(27番)、その後方、GKク・ソンユン、DFキム・ミンテ(右端)がガックリ

■柏レイソルの江坂任選手のコメント
 「相手がけっこうハイラインでプレッシャーに出てくることは分かっていたので、その背後をうまく突いて複数得点できたので、そこは自分たちの攻撃に手ごたえを感じています。1点目は良い位置で受けられましたし、受けてからも落ち着いてDFを見て打てた。2点目もカウンターからスペースに飛び込めたので、そこに良いボールが来て流し込めました」


 上:上段写真/後半23分、MF鈴木が柏DFにはさまれキープできずにこぼれたボールを荒野(右奥)が右足を振ってゴールし1点を返す、開幕したJ1リーグで札幌の今季初得点となった。左端FWジェイ、3番は柏DF高橋祐(3番)

 上:下段写真/後半23分、札幌MF荒野(27番)が1点を返し、ゴールしたボールを小脇にかかえてピッチ中央に向かって走る、柏MF三原(27番)、DF高橋祐(3番)が「やられた!」という表情


 上写真/後半29分、柏MFクリスティアーノ(9番)、FWオルンガ(その左)らの猛攻を札幌MF菅(4番)らが懸命に守る、柏FWオルンガは4得点に絡み実力を見せた

■柏レイソルのオルンガ選手のコメント
 「1点目に関しては札幌が高いラインを保ちながらプレーしていたので、その裏のスペースをわれわれは狙って突こうとしていた。そこでうまく深いところまで行けて、GKとしてはPKを与えたり、レッドカードをもらったりする可能性があったと思うので、足を出してこなかった。だからそれを利用して、自分のスピードを生かしてゴールを奪えた。2点目はクリスティアーノからすごく良いスルーパスが出てきたので、GKと1対1だったけどスピードでかわして得点を奪えた」


 上写真/昨年ほぼ1年を負傷で棒に振った札幌MF駒井(14番)が復活、途中出場して後半45分、柏DF高橋峻(6番)を相手に気を吐く


 上写真/期待された開幕戦で柏に2−4と敗れあいさつする札幌の選手たちを遠来のサポーターたちが激励する


 上:左側写真/前半26分、早くも2点のビハインドに厳しい表情の札幌のペトロビッチ監督、左後方柏のネルシーニョ監督。初戦でぶつかった名監督同士の戦いは1年でJ1に戻ってきた柏のネルシーニョ監督に軍配を上げた

 上:右側写真/後半34分、選手を鼓舞する柏のネルシーニョ監督。狙い通りの展開でJ1昇格、初戦をものにした

■北海道コンサドーレ札幌のペトロビッチ監督のコメント
 「立ち上がりはあまり良くないのかなと思っていたけど、良い形でスタートして何回か得点できそうなチャンスを作れていた。そこを決め切れない中で逆に自分たちのミスから得点を許してしまうという、自分たちにとっては非常にやりづらい展開になってしまった。

 選手たちは、失点後も落ち着いてゲームを運ぼうとしてくれてはいたけど、2失点目もディフェンスラインとGKの連係がうまくいかず、前に出るのか、出ないのか中途半端になったところで失点してしまった。

 ただ、前半は2−0でリードされる展開ではありましたけど、得点は十分に取れるという思いはありましたし、同点、逆転まで持っていける自信はあった。後半はチャンスを作ってくれたと思うが、また先に3点目を取られてしまい、自分たちの思いどおりにいかない展開であった。得点される中で、自分たちも決定機は迎えるけど、決め切れない間に4点目を奪われてしまう。チャンスを決め切れない中で相手に追加点を許してしまう展開だったと思います。

 4−2というスコアになってからも、3点目、そして3点目が取れれば4点目が取れるような展開まで持っていけると思っていた。3点目のチャンスとしては荒野(拓馬)選手がゴール前でGKに止められたシュートやそれ以外にも得点になってもおかしくないような決定機は十分に作れていたので、引き分けまでは持っていけるかなという思いはありましたけど、同点には持っていけなかった。ただ、負けはしたけど、試合を振り返ると決して悪い試合ではなかったと思っています。

 今日のゲームで勝敗を分けたのが、決定的なところで決めたのが柏で、決め切れなかったのがわれわれであろうと。あとは柏のGKは決定機なシュートを何本か止めていたけど、逆にウチはそういう部分で踏ん張り切れていなかった。その2つの違いがスコアの差につながったと思います」


■柏レイソルのネルシーニョ監督のコメント
 「前半の入りは簡単なミスが多く、ちょっとバタついた時間が続き、相手の高い位置からの守備に手こずった部分もありましたけど、高い位置からの守備が機能し始めてからは得点に結びついて、落ち着いてよいテンポで動かせるようになったのかなと。プランどおり、中盤から前への守備がうまく機能したことによって、ショートカウンターでいくつかよい形も作れたので、前半の出来からすればもう少し得点が取れても良かったのかなという印象はありますね。

 ハーフタイムにロッカーで選手たちには「相手のビルドアップのときにスペースを与え過ぎているシーンがいくつかあったので、前から守備でハメよう」と伝えた上で、後半はそのとおりにやってくれた。結果を見れば4−2で、相手は技術の高い組織的に戦えるチームですので、非常に厳しい戦いになりましたけど、今日の1勝はこれからシーズンを戦っていく上で非常に重要な1勝になったと思っています」
 
池田淳 写真はいずれも石井一弘撮影