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“夢、情熱、行動”の人。北海道サッカー協会出口明会長

17・02・11
 上写真/SSAP周辺施設概要図の前で笑顔を見せる公益財団法人北海道サッカー協会の出口明会長。2月3日、北海道フットボールセンター内にて撮影


 公益財団法人北海道サッカー協会の会長を務める出口明氏(74歳)の功績は、現場たたき上げの会長として全国区で有名だ。特に2002年日韓共催FIFAワールドカップの札幌開催招致の成功、その余剰交付金による札幌サッカーアミューズメントパーク(頭文字からSSAPと略称される)の設立は、まさに出口会長(当時の役職は専務理事。会長は村井將一氏)が中心となって実現させたものだ。

 SSAPの管理運営を行うのは、特定非営利活動法人北海道スポーツクラブ。このNPOを立ち上げたのも出口会長。平成18年の竣工から昨年で10周年を迎え、人工芝グラウンドと屋内競技場の人工芝の張り替えなどの改修も行った。

 SSAPの主要施設は、天然芝1面、人工芝1面のサッカーコート、屋内競技場、クラブハウス、合宿などでの利用が可能な宿泊施設の「夢きたれ」に加え、隣に設置された東雁来公園人工芝サッカー場2面の管理も行い、北海道アマチュアサッカー界の聖地とも言える一大拠点となっている。

 「村井將一前会長を始め、関わってくれた多くの方々の協力があってのことですが、ここに至るまでには本当にいろいろなことがあった―」。出口会長は、感慨深く振り返る。「2002年のワールドカップ札幌開催招致成功後も、他の開催地区ではないタイトなスケジュールでの3試合開催は全ての面で厳しいものがあった。しかし、それを現場一体となって成功に導けたからこそ、余剰交付金でのサッカー拠点整備につながった」。

 続けて、「当時は突っ走っていった部分も多く、よく乗り越えられたなと、関係者たちとふと振り返ることもあります。2009年の本協会80周年事業や、昨年のSSAP10周年など滞りなく実行できたことで一段落とも思いますが、本道サッカー界のためにも、フルピッチでの屋根付きサッカーコートを作ることが今の夢ですね」と、雪国での課題を克服すべく一大プロジェクトも明かす。

 出口会長は大きな計画を語る一方、昨年のSSAPの人工芝張り替えの際には、経費削減のためにと切り出した古い人工芝の移動を担当したり、東雁来公園サッカー場に設置した前例の無かった仮設型ナイターの設計図を自ら書いたりと、その行動力とアイデアには感服だ。

 「本来は会長の仕事ではないかもしれないけど、できないことや難しいことが目の前にあると自分でやってみたくなってしまうんです。つきあわされるスタッフは大変かもしれないけど、みんな頑張ってくれましたね(笑)」。

 暫しの沈黙の後、「その中、これまでを振り返って特に家内には迷惑かけてしまったかな・・・。今は専任で協会の仕事を出来ていますが、20代半ばからかかわり始めた頃は研究所勤めで、家に帰ってからはタイプライターの打ち込みなど、朝まで協会の仕事を手伝わせてしまいましたから。でも当時の関係者は皆自分の仕事を抱えながら、本道サッカーのためにと、手弁当で情熱だけでやっていましたね」。出口会長は本道サッカーの歩みと、自身の歩みを重ね合わせながら重みのある言葉で話してくれた。

 また、取材日で驚いたのは、過去の事業詳細を聞くと、北海道サッカー協会事務所(豊平区)の棚に収納されている膨大な資料からわずか数十秒でファイルを見つけ出し、資料を見直す前から、当時の事業計画や数字に至るまで、会長自ら流れるように説明があったこと。確認のために資料を見直す際にも、数百ページはあろうかという資料の中から、ピンポイントでこのページと素早く見つけ出す。実務を担当したからこそ(現場たたき上げの実績)の成せる技だろう。

 北海道サッカー協会の事務所と記載したが、2002年に建物を購入し自前の事務局を持ったのも全国初のこと。今では自社ビルを構える日本サッカー協会本部のJFAハウス(東京都文京区。2003年購入)よりも、先の出来事だ。

 出口会長は、公益財団法人日本サッカー協会でも理事、常務理事(計7年)、その後評議員、参与(6年)も務め上げた。「本当は要職を務める気はなかったのですが、川淵キャプテンを筆頭に、釜本さんなど日本サッカー界の重鎮とも言える人たちから、直々に指名されては断りきれないというのもありました。その中で、全国に先駆けた自前の事務所設置や、ワールドカップや日本代表戦の開催、そして小学校に上がる前の子どもたちへの取り組みがキッズモデルFAとなるなど実績を評価していただいたので、本道サッカー界の発展につなげるべく自分がやろうとなりました」。

 道サッカー協会が目指すサッカーファミリーの増大や競技力向上を掲げた2025プロジェクトをけん引するためにも、“夢、情熱、行動”を体現する出口会長のかじ取りに今後も大きな期待がかかる。


 上:上段写真/SSAP設立当初からの詳細な経緯を説明する出口明会長。多くの困難や苦労を乗り越えての一大事業だが、それを感じさせない朗らかな表情で語る姿が印象的
 上:下段写真/SSAPクラブハウスの外観写真(以下写真提供:北海道サッカー協会)


 上:上段写真/左がナイター照明完備の人工芝グラウンド。右が美しいストライプに整えられた天然芝グラウンド
 上:下段写真/左がSSAP屋内競技場の外観写真。右が屋内競技場内の写真


◆出口明会長プロフィル◆
(昭和17年4月17日生まれ。美唄市出身)

【サッカー歴】
北海道美唄市茶志内中学校サッカー部、北海道立美唄工業高等学校サッカー部、通産省北海道工業技術研究所サッカー部

【職歴】
昭和36年4月〜平成13年3月 通商産業省 工業技術院北海道工業技術研究所
                   (研究員・主任研究官)
平成13年4月〜平成14年7月 (財)2002年FIFAワールドカップサッカー
                   日本組織委員会 札幌支部(競技運営課長
                   ・ゲームオペレーション対応責任者)
平成14年4月〜平成20年3月 (財)北海道サッカー協会 専務理事(常勤役員)
平成20年4月〜平成22年3月 (財)北海道サッカー協会 副会長 (常勤役員)
平成22年4月〜現 在      (財)北海道サッカー協会 会長  (常勤役員)

【表彰】
平成 9年11月 全国社会人サッカー連盟 功労賞   (創立20周年)
平成10年 2月 北海道社会人サッカー連盟特別功労賞(創立20周年)
平成11年12月 札幌社会人サッカー連盟特別功労賞 (創立20周年)
平成15年11月 札幌地区サッカー協会 功労賞    (創立70周年)
平成20年 3月 北海道社会人サッカー連盟特別功労賞(創立30周年)
平成21年11月 (財)北海道サッカー協会特別功労賞 (創立80周年)
平成22年 4月 北海道フットサル連盟 功労賞     (創立10周年)
平成23年 7月 (公財)日本体育協会・日本オリンピック委員会
                             功労賞(創立100周年)

編集部